今回は、「JDSF-PD関東甲信越選手会」より、会長のケビンさんと、事務局を担当されている高橋さんにお話を伺いました。プロダンサーとして活躍しながら、ダンススポーツの普及やイベント運営にも情熱を注ぐお二人に、「朝ダン」の取り組みやダンススポーツの魅力について語っていただきました。
お二人について
ーまずは自己紹介をお願いいたします。


ケビンさん(会長):ケビンと申します。現在、JDSF-PD関東甲信越選手会の会長を務めており、今年で2年目になります。プロダンサーとしては5年目を迎えました。プロとしてのキャリアはまだ比較的浅く、若手の立場ではありますが、経験豊富な先輩方に支えていただきながら、選手会の運営に取り組んでいます。本日ご一緒している高橋先生のように、15年以上のキャリアをお持ちの方もいらっしゃる中で、先輩方の力をお借りしながら、運営を続けている次第です。
JDSF-PD関東甲信越選手会について
ーJDSF-PD関東甲信越選手会を立ち上げたきっかけを教えてください。
高橋さん(事務担当):まず背景として、JDSF(公益社団法人日本ダンススポーツ連盟)は、もともとアマチュアを中心とした団体でした。その中で、2016年にプロフェッショナル部門(PD)が新たに設立されたことを機に、私たちは当時所属していた別の団体からJDSFへと移籍しました。移籍の理由は人それぞれですが、私たちの場合は「ダンススポーツ」という、より競技性の高いダンスに取り組みたいという思いから、この団体への移籍を決断しました。そして現在、私たちが運営しているJDSF-PD関東甲信越選手会は、このダンススポーツの普及を活動理念の根幹に据えており、そうした経緯で選手会が立ち上げられました。
ー「ダンススポーツ」とは、具体的には競技会のことを指すのでしょうか?
高橋さん:これはあまり世間には広く知られていないかもしれませんが、ダンススポーツは「ボールルームダンス」のことです。ただし、「ボールルームダンス」と「ダンススポーツ」は、公的にはまったく異なるものとして捉えられています。簡単に言えば、ダンススポーツは「スポーツ」であり、ボールルームダンスはむしろ「芸術」として位置づけられる傾向があります。その明確な違いのひとつが、「ルールの有無」です。スポーツである以上、公平性を担保するための明確なルールと審査基準が不可欠です。ダンススポーツの競技会では、複数のカップルが同時にフロアで踊り、審判員がそのルールと基準に基づいて厳格に順位をつけます。なぜこのカップルが1位で、なぜあのカップルが2位なのか。その判断には客観的な基準があり、説明可能であることが求められます。主観だけで評価されてしまっては、スポーツとは言えません。そうした明確な審査体系とルールの存在が、ダンススポーツの大きな特徴だと言えます。
ー日本ダンススポーツ連盟(JDSF)との関係性についても教えてください。
高橋さん:私たちのJDSF-PD関東甲信越選手会自体は、JDSFに加盟している団体ではなく、あくまで任意団体です。ただし、選手会への入会資格として、JDSF-PDに選手登録をしていることを条件としています。そのため、選手会のメンバーはJDSF-PD登録選手で構成されており、JDSFとの間に間接的なつながりがある、という形になります。
ーJDSF-PD関東甲信越選手会として、どのような活動を行っているのでしょうか?
ケビンさん:私たちは、主にダンス体験会や普及イベントを通じて、ダンススポーツの魅力を広める活動を行っています。過去には、「ダンスの学校」と題したレクチャー形式のイベントを企画したこともあります。これまでに開催したイベントには、「ふれあいパーティー」やアマチュアとプロが一緒に練習する「PD・GD合同練習会」などがあり、今回は「朝ダン」というイベントも開催します。
高橋さん:基本的にこの選手会は、先ほどもお話ししたとおり、JDSFの公式な組織の一部ではなく、選手による自主的な集まりです。したがって、私たちが競技会を主催しているわけではなく、競技会の主催はJDSFが行っています。私たち選手会は、普及活動の一環として、会長が先ほど述べたように「ダンスの学校」や「レッスン体験会」などの企画・運営を担っています。とはいえ、現時点では定期的に開催できているイベントはまだ少ないというのが実情です。
今回開催されるイベント「朝ダン」について

ー「朝ダン」とはどんなイベントですか?
ケビンさん:「朝ダン」は、朝の時間帯に開催される「ダンスタイム」をメインとしたイベントです。まず、お客様にはフロアを囲むようにして50〜60名ほどご着席いただきます。そこを、プロの先生たちが順番にまわり、お客様をお誘いして一緒に踊るという形式です。たとえば、ワルツの曲が流れたらワルツを、チャチャチャがかかればチャチャチャを、というように、それぞれの種目に応じて先生とお客様が1曲ずつペアを組んで踊ります。1曲踊り終えるごとにお客様には席にお戻りいただき、先生方がまた別のお客様をお誘いしていきます。フロア内では、一度に10組近くのペアが同時に踊ることとなります。これは競技ではなく、純粋にダンスを楽しんでいただくことを目的としています。
ー参加されるお客様はどのような方々ですか?
ケビンさん:今回の特に朝ダンに関しては、お客様と踊るアテンダントとして参加してくださる先生方の生徒さんが主な参加者です。そのため、必然的にある程度ダンス経験のあるお客様が中心となります。先生方と日頃からレッスンを受けていらっしゃる、経験豊富な方が多いですね。
ー「朝ダン」を始めたきっかけを教えてください。
ケビンさん:一般的に、ダンスパーティーは午後から開催されることが多いですが、昨年、たまたま午前中に会場を確保できたことがきっかけで、何か新しいことができないかと考え、朝の時間帯に開催するイベント「朝ダン」に挑戦しました。第1回は2024年の夏頃に実施し、予想以上に好評だったため、第2回(今回)の開催に至りました。
高橋さん:お客様の年齢層が比較的高めなこともあり、「朝の方が参加しやすい」「終わった後に時間を有効活用できる」といったお声を多くいただき、大変好評でした。
お二人の考え方
ーお二人のダンススポーツに対する想いを教えていただきたいです。
ケビンさん:僕は、ダンススポーツを生涯スポーツだと捉えています。若い頃はもちろん体力もあり、競技会や高い目標に挑戦して頑張ることもできます。しかし、年齢を重ねたからといって、できなくなるわけでは全くありません。趣味としても、体と頭を同時に使いますし、健康維持に繋がる有酸素運動としても非常に優れています。本当に、ダンススポーツがもっと広まって、楽しむ人が増えてほしいと思っています。
高橋さん:私も、生涯スポーツとしての魅力が一番大きいと感じています。もちろん、一人で踊る楽しさもありますが、二人で踊ることには、それに伴う苦労や努力が必要不可欠です。しかし、それを乗り越えた先に得られる達成感や喜びは、一人ではなかなか味わえないものだと思います。その点をもっと多くの方に知っていただき、参加者が増えていくと良いなと思っています。また、認知症予防という観点からも、社交ダンスが非常に効果的だとされています。特に、踊りながら会話をすることが脳に良い刺激を与えると言われています。このように、競技ダンスから愛好家の方まで、幅広い層の人々に楽しんでもらえるスポーツです。この魅力がもっと広く認識され、さらに多くの人が参加するようになると素晴らしいと考えています。
ーこの活動を通して伝えたいことや目標はありますか?
ケビンさん:「朝ダン」に関しては、朝の早い時間から皆様に楽しく音楽に合わせて体を動かしていただき、素晴らしい一日のスタートを切っていただくことを目指しています。音楽が流れる中で、好きな先生と踊りながら体を動かす、その純粋な楽しさを感じていただければ何よりです。そして、JDSF-PD関東甲信越選手会としての一番の目標は、やはりダンススポーツの認知度向上と普及です。競技としての側面だけでなく、生涯スポーツとしても多くの方に親しんでいただけるよう努めていきたいです。
高橋さん:そうですね。さまざまな愛好家の方々と、こうしたダンスタイムを通じて交流することで、選手会やダンススポーツへの認知度が高まることを期待しています。
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