【オンラインインタビュー】山崎義也氏が語る「子どもミュージカル」の魅力とその未来

目次

今回は、元劇団四季の俳優であり、現在は「JOYKIDS MUSICAL SCHOOL」主宰、さらにジュニアキャストによるミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』の企画・演出を手掛ける山崎義也さんに、ご自身のキャリアからスクール立ち上げの背景、そして今回上演されるミュージカルの魅力まで、詳しくお話を伺いました。

 

ーまずは自己紹介をお願いします。

山崎義也氏
山崎義也氏

山崎義也と申します。1975年生まれで、今年で50歳になります。19歳の時にジャズダンスを、21歳でバレエを始めました。そして22歳で劇団四季の研究所に入所し、その後9年間、俳優として活動をしてきました。

31歳で劇団を退団した後は、子どもたちのためのミュージカルスクールを立ち上げました。現在は、「JOYKIDS MUSICAL SCHOOL」を運営し、ジュニアキャストによるミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』の上演も手掛けています。

 

JOYKIDS MUSICAL SCHOOLについて

ーJOYKIDS MUSICAL SCHOOLではどのようなことを教えているのですか?

JOYKIDS MUSICAL SCHOOLでは、ミュージカルの基本であるダンス、歌、演技を中心に指導しています。ただし、技術の習得だけでなく、「楽しみながら成長できる環境」を提供することを大切にしています。

私たちのスクールはスパルタ式やコンクール至上主義ではありません。子どもたちが自分のペースで楽しみながら技術を学べることを重視しており、表現の喜びや仲間との体験共有を通じて、子どもたちの人間的成長も促進できればと考えています。

 

ーなぜ「子ども向け」のスクールにしようと思われたのですか?

私がミュージカルを始めたのは18歳で、比較的遅いスタートでした。プロとして活動していた当時も、「もっと早く始めていればよかった」と感じることが多々ありました。というのも、周りには幼い頃からレッスンを重ね、しっかりと基礎を築いた上でプロになった仲間が多かったからです。そうした人たちと比べると、技術面や基礎力でどうしても「敵わないな」と感じることがありました。

特に10代前半は、心身ともに大きく成長する時期なので、そのタイミングでダンスや舞台芸術に触れておくことは将来的に大きな意味を持つと思うんです。プロになる、ならないは関係なく、子どもたちがそういう表現の場を通して、技術だけではなく人間的にも成長できる場を提供したいという思いでスクールを立ち上げました。

 

ースクールには何歳くらいのお子さんが多いのですか?

バレエクラスは3歳から、ミュージカルクラスは4歳から受け入れています。生徒の中心は小学生ですね。

小さいうちに始めることの大きなメリットは、「表現に対する抵抗感がない」ということだと思うんです。ダンスだけであれば10代からでも間に合うと思うんですけど、ミュージカルって、歌ったりセリフを言ったり、全身で表現していくものじゃないですか。そういう意味で、自己表現への抵抗感が少ないうちに始めることが、とても効果的だと考えています。

だからこそ、できるだけ低年齢から受け入れられるようにしたかったんです。表現することが自然なこととして身につけば、その後も伸び伸びと自分を出せるようになる。そうした環境を整えることが、私たちのスクールの大事な役割のひとつだと考えています。

 

ーワークショップや体験会などはありますか?

JOYKIDS MUSICAL SCHOOL
JOYKIDS MUSICAL SCHOOL

はい。体験レッスンは常時受け付けており、発表会稽古期間の約三ヶ月を除けば、いつでもご参加いただけます。また、夏休みには会員以外の方も参加できるワークショップも開催しています。入会前提ではなく、まずは気軽に舞台芸術に触れてみたいという方にもおすすめです。さらに、通常のレッスンとは別に、日曜日にはビジター向けの限定レッスンも行っています。

JOYKIDS MUSICAL SCHOOL は私が主宰している清澄白河校(東京)の他に、柏校(千葉)、湘南平塚校(神奈川)があります。『子どもたちの多彩な表現力を伸ばす』というコンセプトは同じですが、それぞれ劇団四季出身の主宰者が個性的な活動をしています。体験等に関しては、各校にお問い合わせいただければと思います。

JOYKIDS MUSICAL SCHOOL公式サイト

 

ーミュージカルを学ぶ上で、何が一番大事だと思いますか?

やはり一番大事なのは「楽しい」と感じることですね。しかし、ただ体を動かすような表面的な楽しさだけではなく、「本物の楽しさ」を体験してほしいと思っています。

たとえば、舞台に立ってお客様から拍手をいただく。自分が頑張った結果が誰かの心に届いて、「楽しかった」「感動した」って言ってもらえる。そういった感情の共有は、すごく大きな喜びになるんですよね。

もちろん、そこにたどり着くまでには技術も必要ですし、表現力や魅せ方も身につけていかなければなりません。ですが、そうやって努力を重ねて得られる喜びは、何倍にもなって返ってくるんです。単なる自己満足ではなく、自分の楽しさが周りにも伝わり、観ている人も、仲間も、そしてそれを感じた自分もさらに楽しくなる。そんな循環を大事にしたいと考えています。

 

ミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』

ミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』
ミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』

ー『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』についても教えてください。

『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』は2011年に初演し、コロナ禍の2年間を除き、毎年上演しています。一般オーディションで選ばれた子どもたちが出演し、一般の観客にも感動を届けられるクオリティを目指しています。この作品は総勢27名の子どもたちで上演するのですが、今年は約500名の応募の中から、ダブルキャストで54名のジュニアキャストが選ばれました。大人のプロキャストも2名出演します。

 

ー主演や重要な役を務めるキャストどのように決めているんですか?演技力だけではなく、性格や雰囲気が役に合っているのかということも考慮されるのでしょうか?

はい、私たちはその両方を求めています。特に主演の「ガンバ」は難しい役で、演技・歌・ダンスすべてにおいて高いレベルが求められますし、リーダーシップも必要です。

そう考えると、とてもハードルが高い役ですが、毎年それだけのスキルを持った子が選ばれています。今年も中学3年生の二人が演じますが、非常にレベルが高く、将来性を感じさせる素晴らしい才能の持ち主だと感じています。

 

ー『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』は、どんな人に観てほしい作品ですか?

主なターゲットはジュニアキャストと同年代の小中高校生ですが、実際には大人の方からご年配の方まで、幅広い層にご好評いただいています。作品には、挑戦、仲間との絆、愛、喪失、成長といった普遍的なテーマが含まれており、どの世代の観客にも共感していただける内容となっています。

実際に主人公の「ガンバ」はネズミを助けるため、勝ち目のない相手に立ち向かいます。その勇気が周りを動かし、仲間を得ながら、愛や恋、そして時には喪失をも経験し、成長していきます。この物語はどの世代がご覧になっても、ご自身と何かしら重ね合わせることができる内容になっていると思います。

 

ーダンスに関して、どんなスタイルの振り付けがあるのですか?

ダンスに関して言うと、オーソドックスなシアターダンスが中心で、劇団四季や宝塚のスタイルに近いと言えます。ですが、一部ヒップホップの要素も取り入れていますし、特に「バレット」という役柄には、クラシックバレエの高い技術も求められます。

全体的にはシアタージャズが基本的なスキルベースとなっています。

 

山崎さんのキャリアと考え

ー山崎さんがミュージカルを始めたきっかけはなんですか?

大学に入学してすぐ、ミュージカルサークルの舞台を観たのがきっかけです。そこで目にした大学生たちが、全力で歌い、踊り、演じている姿に、ものすごく衝撃を受けたんです。

高校生くらいまでは、どこか「人前で表現するのって恥ずかしい」など、ブレーキがかかることってあるじゃないですか。でもその舞台では、そんな迷いが全く感じられませんでした。むしろ、自分を思いきり曝け出し、自由に解放している感じがとても清々しく、「こんな世界があるんだ!」と感動したんです。それで、後先考えずに飛び込みました。

そこからはもう、ずっと続けています。なぜか一度も「やめよう」と思ったことがないんです。きっと、自分の中に何か強く響くものがあったのだと思います。

 

劇団四季を退団され、ご自身でスクールを立ち上げられた理由について教えてください。

脚本を書いたり演出をしたりといった、クリエイティブな仕事をしたいという思いが強かったからです。

組織の中にいると、その組織の発展や、運営のために必要なこともやらなければいけないじゃないですか。しかし、私の中では、自分で演出して作品を作りたいなっていう思いがずっとあったんです。それを組織の中で実現するには時間もかかるので、自分でやった方が早いと思ったんです。

 

ー子どもたちを教える上で大変だったことはありますか?

それはもう、たくさんありましたね。最初は本当に手探りでした。小さい子どもたちに教えるのは、大人に伝えるのとはまったく違うんです。いかにかりやすく、噛み砕いて伝えるか。技術を教えるだけではなく、「楽しい」と感じてもらうことも大切なので、そのバランスが非常に難しかったです。

でも、子どもたちの心を掴むコツのようなものが自分の中で少しずつ見えてきてからは、教えるのがどんどん楽しくなっていきました。

 

ーその中でやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?

子どもたちが「できた!」と実感した瞬間ですね。それまでできなかったことが、ある日ふっとできるようになり、その結果、表現がガラッと変わることがあるんです。そういった成長の瞬間を一緒に発見し、共に喜べることは、本当に嬉しいですね。

それは私自身にとっても学びであり、「教えることで自分も成長させてもらっている」という感覚があります。子どもたちも、自分の変化を実感できると、それがすごく大きなモチベーションになります。その成長のプロセスに寄り添えるのが、この仕事の一番のやりがいだと感じています。

 

ーミュージカルの一番の魅力はなんだと思いますか?

やはりミュージカルの一番の魅力は「総合芸術」である点だと思います。音楽、ダンス、演技が融合し、それぞれが相乗効果を生み出すところが魅力ですね。様々な表現形態がある中で、ミュージカルはその場面ごとに最もふさわしい表現方法を選択できる芸術です。それが難しさでもあり、センスが問われる部分でもあります。

しかしその分、観客にとっては、ダンス、歌、芝居、それぞれの要素を楽しむことができる。それがミュージカルの強みだと考えています。

 

ーミュージカルはこれからどう変わっていくと思いますか?

世界的には、ミュージカルがさらに多様化し、市場も広がると考えています。日本はまだアメリカやイギリスほどの規模には達していませんが、それでもこれから成長していく市場だと思います。実際、観客層も広がっていますし、ミュージカルをやりたいという人も増えています。

私自身も、この市場をさらに拡大していきたいと考えています。特に、若い世代の表現の場を広げ、関わる人や観客を増やしていくことを目指し、できる限りの努力をしていきたいです。

 

ー今後の目標や伝えたいメッセージがあれば教えてください。

メッセージとしては、この作品のテーマでもある「未知のことへの挑戦」の大切さを伝えたいですね。そして目標としては、自身の作品である『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』を、東京だけでなく全国各地で上演したいと考えています。

 

 

『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』

  • 日時:2025年6月14日(土)・2025年6月15日(土)開催予定
  • 場所:新国立劇場 中劇場
  • 出演:一般オーディションで選ばれたジュニアキャスト(54名・各組27名ずつ)+大人のプロキャスト2名
  • 詳細はこちら:ミュージカル『冒険者たち 〜この海の彼方へ〜』

 

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